初午とは
初午とは、全国の稲荷神社でお祭りがおこなわれる日のことです。日本には干支の考え方があり、今でも年を干支で数える習慣があります。
今では活用されていませんが、かつては同じように、日にも干支があてられていて、子日、丑の日、午の日などがありました。
一日目から順番に「子・丑・寅・卯…」と続き、13日目にまた「子」に戻って日にちを数えます。初午は2月最初にやってくる午の日に当たります。
初午はいつ?
初午を数えるとき、どうして2月を起点にするのでしょうか。2月上旬に訪れる立春は、ここから春が始まる日として、かつて一年の始まりと考えられてきました。
そのため、初午も「立春が過ぎて最初の午の日」とされています。立春は旧暦の2月にあるので、現代では新暦の2月最初の午の日が採用されています。
2021年の初午はいつ?
2021年の初午は2月3日です。2021年の立春は2月3日なので、一番最初にやってくる午の日は2月3日となります。つまり、2021年は立春と初午が同じ日になります。
他の年の初午の日も合わせて、表でみてみましょう。
年 | 初午 | 立春 |
2020年 | 2月9日 | 2月4日 |
2021年 | 2月3日 | 2月3日 |
2022年 | 2月10日 | 2月4日 |
2023年 | 2月5日 | 2月4日 |
2024年 | 2月12日 | 2月4日 |
初午の由来とは?
どうして初午を特別にお祭りするようになったのでしょうか。初午の由来について紹介します。
初午の由来は伏見稲荷大社
初午の由来は京都にある伏見稲荷大社だと言われています。京都にある伏見の伊奈利山に宇迦御霊神(うかのみたまのかみ)がおりてきた日が初午の日です。
宇迦御霊神(または倉稲魂神)は農耕をつかさどる神と言われ、信仰を集める神様です。
そこで、宇迦御霊神の降臨をお祝いして初午の日にお祭りを始めたのが今の初午の起源と言われています。
いつ伏見稲荷大社のお祭りの日になったの?
実は、伊奈利山に宇迦御霊神荷が下りてきた日も伝えられています。それは今から1300年ほどさかのぼった和銅4年(712年)2月11日です。
ほかにも和銅3年(711年)3月4日や、2月9日、3月2日などの説もあります。
初午にお参りする意味って?
初午のお祭りを行う稲荷神社は、もともと農耕と強く結びついていました。稲荷の文字は「稲」が「生(な)る」が語源です。さらに、稲荷信仰は商業の街では商売繁盛の神様となります。
もともと生産や生業に結び付いていた稲荷信仰は、次第に農業に限定されない、広い意味で縁起の良い神様ととらえられます。
初午も五穀豊穣に限らず、縁起の良い開運の日と考えられました。今では初午にお参りすることを「福参り」と呼び、いろいろなご利益が受けられると言われています。
どうして初午にお稲荷さんを食べる?
初午の日はおいなりさんを食べるという話を聞いたことはありませんか。どうして初午にはおいなりさんを食べるようになったのでしょうか。
初午とおいなりさんの結びつきを紹介します。
きつねは田んぼの神様でもある
初午の由来となった伏見稲荷大社でまつられている宇迦御霊神は、もともと田んぼの神様です。田んぼの神様は春になると山から下りてきて、冬になると山に帰ると考えられてきました。
そして、稲荷神社に欠かせないきつねも、稲作にとって迷惑なネズミを食べてくれることから農耕の神様と重ねられてきた動物です。
春になると、きつねも山から下りてきてネズミを食べてくれるので、田んぼの神様の使いとして信仰されるようになります。
油揚げやお稲荷さんをお供えする理由
それでは、どうしてきつねのお供えに油揚げが使われるのでしょうか。きつねは田んぼの害獣であるネズミを食べます。
そこで、お供えものとしてきつねが食べるネズミを揚げたものが用いられるようになり、次第により身近な揚げ物である油揚げが使われるようになったと考えられています。
また、他にも五穀豊穣のお供えとして使われる米・麦・あわ・きび・大豆などの穀物のなかから、身近な大豆の加工品である油揚げが選ばれるようになったという説もあります。
初午の日の料理・行事食
初午の日には、お稲荷さんのほかにもいろいろな行事食があります。代表的な初午の行事食を紹介します。
初午だんご
初午団子は、富山県などを中心に、養蚕が盛んな地域に根付いた初午の行事食です。蚕の形につくられているので、繭団子とも呼ばれます。
蚕が良く育ち、たくさん眉が取れるようにと養蚕のご利益を祈って初午にお供えされる団子で、白い団子に染みがつかないように醤油をつけずに食べる風習があります。
旗飴
旗飴は奈良県に伝わる初午の行事食です。旗を巻き付けた棒の先に、飴をつけたお菓子で、ハロウィンのように子供たちが「旗飴ちょうだい」と言いながら各家を回ります。
これは、もともとは商売繁盛をお祈りする風習で、商売をしている家が飴を稲荷神社にお供えした後、そのおさがりを子供たちがねだりに来たことが起源だと言われています。
しもつかれ
しもつかれとは、栃木県を中心に北関東で見られる初午の行事食です。鮭の頭と、おにおろしで粗く、すった大根やニンジン、油揚げに節分のときの大豆を酒粕で煮込んだ郷土料理です。
「しもつかり」や「しみつかり」などとも呼ばれ、沢山の家のしもつかれを食べると無病息災になるなどの俗説もたくさんあります。
初午には藁で作った「わらづと」にしもつかれを入れ、赤飯と一緒に稲荷神社に奉納する風習も残っていて、今でも地元に根付いている行事食と言えるでしょう。
赤飯
初午には赤飯を食べることもあります。初午の時期は農作業の始まりの季節でもあり、その年の豊作を祈願しておめでたい赤飯でお祝いをする意味が込められています。
また、江戸時代の生理用品は馬の腹帯の形によく似ていたため、月経のことを「おうま」と言いました。
そこから初めての「おうま」=初潮をお祝いするときも赤飯を炊く習慣が生まれたようです。
二の午・三の午とは?
初午に続く、二の午、三の午の日をお祝いする風習もあります。初午の次に来る二の午、三の午とはどのような日のことでしょうか。
二の午・三の午はいつのこと?
二の午、三の午とは、初午の次にやってくる午の日のことです。午の日は干支で12日ごとに巡ってくるので、二の午は初午の12日後、三の午はさらに12日後にあたります。
ただし、2月中に三回目の午の日が来ない年もあり、中には三の午がない年もあります。
2021年の二の午・三の午はいつ?
2021年の二の午は2月15日、三の午は2月27日です。そのほかの年の二の午、三の午の日も表で確認しましょう。
年 | 二の午 | 三の午 |
2020年 | 2月21日 | 3月4日 |
2021年 | 2月15日 | 2月27日 |
2022年 | 2月22日 | 3月6日 |
2023年 | 2月17日 | 3月1日 |
2024年 | 2月24日 | 3月7日 |
おすすめの初午祭
初午の日にお参りしたいと考えて散る人におすすめの、有名な初午祭りを紹介します。紹介するお祭りのほかにも、各地域で初午祭りを行っているところはたくさんあります。
身近な神社などの行事もチェックして、初午の福参りをしてみましょう。
伏見稲荷大社の初午大祭
初午の由来にもなった伏見稲荷大社では、毎年大きな初午祭りがおこなわれています。
初午の二日前にあたる、辰の日に稲荷山の杉と椎の枝で作った“青山飾り”をかざり、社頭では「しるしの杉」がお守りとして授けられます。
普段から人の多い神社ですが、この日は大変混雑するので、しっかり準備してお参りしましょう。
鹿児島神宮の初午祭
鹿児島県霧島市にある鹿児島神宮でも、古くから初午祭がおこなわれています。旧暦1月18日を過ぎた最初の日曜日に鈴かけ馬の踊りや踊り連の舞を奉納する大きなお祭りです。
500年以上も続く南九州を代表する初午のお祭りで、毎年10万人もの人が訪れます。
初午にお稲荷さんを手作りしよう
初午のお祝いに、自分でお稲荷さんを作ってみるのもおすすめです。お稲荷さんは手軽に作れるお寿司のメニューなので、料理が苦手な人でも安心です。
甘く煮詰めた寿司揚げに、酢飯を握って詰めるだけ。酢飯にはごまやひじき、ニンジンなどの野菜を混ぜ込むのもよいでしょう。
好きな具を入れた自家製のおいなりさんで初午に開運の祈願をしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
初午という名前は聞いたことがあっても、その由来や日はわからないとい人も多いでしょう。しかし、初午は広く信仰を集める稲荷神社と結びついているお祭りの日です。
非常に縁起の良い日とされ、開運祈願をするのにはもってこいの日と言えます。お稲荷さんをお供えしたり、近くの稲荷神社に福参りをして、その年の開運をお祈りしましょう。