不動産取得税と申告
不動産取得税は不動産(土地や家屋など)を取得した時や、居住建物を新築・増築した時に一度だけ課税される地方税です。
不動産を取得したら、土地や家屋の所在地にある都道府県税事務所に申告をしなくてはなりません。申告の期限は各都道府県によって異なりますが、概ね20~60日の自治体が多いです。事前に期限の確認をしておきましょう。
申告してから半年から1年後の忘れた頃に、都道府県税事務所から納税通知書が郵送されてきますので、期限がいつまであるかを確認して指定された方法で納付します。不動産業者等を仲介している場合は、売買の中の諸経費等の中に含まれていて、業者が手続きを代行してくれます。
不動産取得税の対象となるもの
- 不動産取得税の対象になるもの、ならないもの
- 通常の売買(土地や家屋の購入)
- 贈与(相続時精算課税制度の適用を受けた場合も含む)
- 交換(等価交換による不動産の取得)
- 家屋の改築・増築の場合
改築・・・価格が増加すれば課税されます
増築・・・常に課税されます
- 不動産取得税の対象にならない物
- 取得者が国等である場合
- 取得が公共性の高い用途に供される場合
- 相続(包括遺贈・遺贈を含む)の場合
- 法人の合併の場合
- 登記の有無に関わらず、物件を取得した場合は申告が必要です。
不動産取得税の計算方法
不動産取得税額=取得した不動産の価格(課税標準額)×税率
で計算することができます。
「取得した不動産の価格」、「税率」のついて以下で詳しく紹介します。
「取得した不動産の価格」とは
ここで言う「不動産の価格」とは購入時の価格や建設にかかった費用ではありませんので注意が必要です。
「不動産の価格」は定められた固定資産評価基準で決まっている価格で、市町村の固定資産課税台帳に登録されています。新築・増築などの固定資産課税台帳に登録されていない場合は、固定資産評価基準によって評価された価格になります。
新築・増築された物件の固定資産税は翌年の1月1日が基準日となりますので、初年度は年数の経過に応じた減価が行われます。しかし、不動産取得税は不動産を取得した時の価格で課税されますので、減価はありません。
したがって、新築や増築の場合の不動産取得税の不動産価格は、固定資産税の基礎となる価格と比べて高くなることが多くなっています。
「税率」とは
税率は地方税法で規定されていて4%と定められています。特例により、2021年3月31日までは住宅・土地は税率が3%に軽減されています。同様に土地の固定資産税評価額も1/2の額に軽減されています。ただし、非住宅の家屋については不動産取得税軽減の対象にはならず、4%の税率が適用されます。
2021年4月1日以降の不動産取得税軽減については未定となっています。税制改革が行われなければ、住宅・非住宅を問わず土地・家屋とも税率は4%となります。たかが1%ですが、元の金額が大きいですので結構な金額となり、取得時の経済的負担となります。
一定金額未満の不動産は課税されません
- 非課税の土地
- 10万円未満の土地
- 非課税の家屋
- 1戸23万円未満の新築・増築・改築
- 1戸12万円未満の家屋の取得(売買など)
不動産取得税の軽減措置
不動産取得税は条件が整えば、様々な軽減措置が適用されます。該当する場合は初めから税額を抑えることができたり、納めすぎた税金を還付してもらえたりします。新築物件と中古物件などでも条件が異なりますので注意しましょう。
新築住宅の軽減措置
新築住宅でも、賃貸用住宅でも軽減措置の対象であり、固定資産税評価額から1,200万円が控除され、取得した不動産の価格から控除額をマイナスすることができます。ただし、下記のように住宅の床面積に条件があります。
- 自分が居住する住宅用:床面積が50~240㎡であること
- 賃貸住宅(貸家):一戸建の住宅なら50~240㎡、マンション・アパートなどの区分所有住宅なら40~240㎡であること
中古住宅の軽減措置
中古住宅の軽減措置は取得した人がそこに居住する場合に限られます。住宅以外の中古物件であっても、取得前に住宅用にリフォームしてあれば該当します。
中古住宅の場合も床面積の要件は新築住宅の場合と同様ですが、他の面で新築住宅に比較して少し厳しい適用要件となります。新耐震基準に適合した物件かどうかによっても軽減額が違います。
新耐震基準に適合する中古住宅の軽減額(控除額)
下記の2つの耐震基準要件のいずれかを満たさなくてはなりません。
- 昭和57年1月1日以降に新築されたものであること
- 昭和56年12月31日以前に新築された住宅である場合、建築士等により新耐震基準の適合が証明されたものであること(調査が取得日前2年以内に終了していること)
軽減額はいつ新築された物件であるかによって違い、下の表のようになっていて、取得した不動産の価格から控除額をマイナスすることができます。
新築年月日 | 控除額 |
---|---|
平成9年4月1日以降 | 1,200万円 |
平成元年4月1日~平成9年3月31日 | 1,000万円 |
昭和60年7月1日~平成元年3月31日 | 450万円 |
昭和56年7月1日~昭和60年6月30日 | 420万円 |
昭和51年1月1日~昭和56年6月30日 | 350万円 |
昭和48年1月1日~昭和50年12月31日 | 230万円 |
昭和39年1月1日~昭和47年12月31日 | 150万円 |
昭和29年7月1日~昭和38年12月31日 | 100万円 |
新耐震基準に適合しない中古住宅の軽減額(控除額)
住宅取得時点で、新耐震基準に適合していない場合には住宅取得後6ヶ月以内に耐震改修工事を行うか、耐震工事が行われている場合は建築士等による耐震診断等によって耐震基準に適合していることを証明してもらってから居住することが必要です。
いずれにしろ、新耐震基準をクリアしてから6が月以内に居住することで軽減措置の対象となるということです。控除額は下記の表のようになっています。
新築年月日 | 控除額 |
---|---|
昭和56年7月1日~昭和56年12月31日 | 12万6,000円 |
昭和51年1月1日~昭和56年6月30日 | 10万5,000円 |
昭和48年1月1日~昭和50年12月31日 | 6万9,000円 |
昭和39年1月1日~昭和47年12月31日 | 4万5,000円 |
昭和29年7月1日~昭和38年12月31日 | 3万円 |
新型コロナウイルス感染症の影響で耐震工事が遅れている方
- 下記の要件を全て満たせば、居住要件の「取得日から6ヶ月以内」が「耐震改修工事終了の日から6ヶ月以内」に緩和されます。(令和4年3月31日までの居住に限ります。)
- 住宅を取得した日から5月を経過する日、または令和2年6月30日までに耐震改修の契約が行われていること。
- 新型コロナウイルス感染症及びそのまん延防止のための措置の影響により当該耐震基準不適合既存住宅を取得の日から6ヶ月以内に居住の用に供することができなかったこと。(入居時期に関する申告書兼証明書(様式B-2)を、申告時に添付)
住宅用土地の軽減措置
住宅用の土地は45,000円または、「土地1㎡あたりの価格」×「住宅の床面積の2倍(1戸当たり200㎡が上限)」×税率、のいずれか大きい方の金額を不動産取得税から差し引くことができます。
「土地1㎡あたりの価格」は固定資産税評価額から計算された1㎡の価格ですが、令和3年3月31日までは1/2になり、税率は3%が適用されます。
ただし、新築であるか中古であるか、また土地と住宅のどちらを先に取得したかで下の表のように適用要件が変わります。
新築用住宅の土地の軽減要件 | |
---|---|
土地が先 住宅が後 |
土地を取得してから3年以内に住宅を新築し、新築されるまでその土地を所有していること。 |
住宅が先 土地が後 |
住宅を新築してから1年以内に土地を取得していること。 |
中古住宅用の土地の軽減要件 | |
---|---|
土地が先 住宅が後 |
土地を取得後1年以内にその土地にある住宅も取得していること |
住宅が先 土地が後 |
住宅の取得後1年以内に敷地を取得していること |
軽減の手続き方法
納付手続きには、一度の申請で済ませる方法と、軽減無しで一旦納税しておいて、後から還付請求をする方法があります。
売買に不動産業者等が仲介で入っている場合は、不動産業者等が申請と同時に必要書類を整え、手続きを代行してくれるのが一般的です。不動産業者から説明がなかった場合には必ず問い合わせましょう。
一度の申請で済ませる方法
「不動産取得税申告書」と「不動産取得税減額申請書」を同時に提出する方法です。軽減措置の対象の不動産であることを証明する書類が、不動産取得税申告書提出の期限内で整えることができれば、申告と同時に軽減措置を受けることができます。
必要書類については各税務事務所のホームページ等で確認したり、直接問い合わせることをおすすめします。地方税ですので、整える書類も若干自治体によって異なる場合があります。
同時申請の場合は納税通知書が届いた段階で、記載された金額には軽減措置が適用されていて、初めから低い金額で納税することができます。また、軽減措置により不動産取得税が発生しなかった場合には納税通知書は郵送されてきません。
一旦申告・納税してから還付請求をする方法
一旦軽減措置なしで不動産取得税を申告し、納付書が届いたらその税額で納税しておきます。その後、「不動産取得税減額申請書」に必要書類を添付することによって還付の請求をすることができます。必要書類はかなり多いですので、余裕を持って納めるにはこちらの方法が適切な場合もあります。
不動産は登記されると、申請がない場合でも不動産取得税の納付書が届きます。しかし、本来は登記されていてもされていなくても、不動産取得時に必ず申告して納めなくてはりません。